リレックス スマイル 研究会

学術論文

記事詳細

記事一覧に戻る

サイト掲載日 2017年09月27日

リレックススマイルの学術報告

1.視力や予測性に関して
まずリレックススマイル手術で一番気になるのは、術後の視力がどうかという点です。現在世界で最も行われている屈折矯正手術はレーシックで、術後の視力回復及び予測性が非常に高い手術です。リレックススマイル手術はレーシックと異なるレーザーを使用するため、術後の視力や予測性について様々な研究で検討されてきました。その結果、術後の視力及び予測性に関してレーシックと同等であるということが分かっています1。名古屋アイクリニックから報告されている論文では手術後の平均裸眼視力は1.56、予測からの±1D以内に100%が矯正されており良好な成績が報告されています2。北里大学眼科の報告でも術後裸眼視力1.0以上が96%、予測からの±1D以内に100%が矯正されていると報告されています3。

1. Lin F, Xu Y, Yang Y.
Comparison of the visual results after SMILE and femtosecond laser-assisted LASIK for myopia. J Refract Surg. 2014
Apr;30(4):248-54.

2. 澤木綾子、長谷川亜里、小島隆司、中村友昭、片岡嵩博、市川一夫、
Laser in situ keratomileusis とSmall incision lenticule extractionの術後成績の比較、IOL&RS 29: 384-390, 2015

3. Kamiya K, Shimizu K, Igarashi A, Kobashi H. Visual and refractive outcomes of
femtosecond lenticule extraction and small-incision lenticule extraction for myopia.
Am J Ophthalmol. 2014 Jan;157(1):128-134.

 

2.リレックススマイル手術の安全性に関して
一般的に、屈折矯正手術の安全性は、手術前後で矯正視力(眼鏡で矯正した際の最高視力)が悪化していないかどうか(2段階以上低下で悪化と考える)で判断します。リレックススマイル手術の安全性に関しては、北里大学から52眼の治療成績が報告されています。矯正視力が手術前後で2段階以上低下した症例は1例もなく、安全性が高い事が報告されており、この結果はその他の報告でも同様です。

Kamiya K, Shimizu K, Igarashi A, Kobashi H. Visual and refractive outcomes of
femtosecond lenticule extraction and small-incision lenticule extraction for
myopia. Am J Ophthalmol. 2014 Jan;157(1):128-134.

ただし、リレックススマイル手術は、レーシック手術よりも高い技術と専用のレーザーが必要とされ、手術結果にもラーニングカーブ(経験曲線)があることが報告されています。

Ivarsen A, Asp S, Hjortdal J.
Safety and complications of more than 1500 small-incision lenticule extraction procedures. Ophthalmology. 2014
Apr;121(4):822-8.

 

3.高度近視に対するリレックススマイル手術の成績
2015年に報告されたデンマークで行われた研究では、-6D以上の高度近視83眼をリレックススマイル手術後3年経過観察した結果が報告されています。術後3年の裸眼視力は平均で0.93、矯正視力は1.20と高度近視にも関わらず有効であることが示されています。また近視の戻りが殆ど無く、安定性が高いことも報告されています。
Pedersen IB, Ivarsen A, Hjortdal J. Three-Year Results of Small Incision
Lenticule Extraction for High Myopia: Refractive Outcomes and Aberrations. J
Refract Surg. 2015 Nov;31(11):719-24.

4.リレックススマイル手術の長期成績について
近視矯正手術はその長期の安定性がどうかという点が、気になるところかと思います。ドイツで行われた研究では、リレックススマイル手術後5年の経過観察を行い、術後6ヶ月以降の度数や視力に変化が無いことが示されています。レーシックでは徐々に近視化が進むと言われている中で、リレックススマイル手術の安定性が証明された研究となっています。
Blum M, Täubig K, Gruhn C, Sekundo W, Kunert KS. Five-year results of Small Incision Lenticule Extraction (ReLEx SMILE). Br J Ophthalmol. 2016 Sep;100(9):1192-5.

5.リレックススマイル手術のメリット
レーシックと大きく異なるのは、角膜を大きく切らないという点です。これによって、外傷などでフラップがずれるという合併症が起こらないというだけでなく、術後ドライアイに関してもメリットがあると考えられます。名古屋アイクリニックからの報告では、レーシック手術を受けた患者さんと比較すると、リレックススマイル手術の患者さんには術後の角膜知覚の低下がほとんどなく、術後1ヶ月時点ではレーシックよりも知覚が保たれていることが分かりました1。北里大学からは、実際に角膜神経を共焦点顕微鏡で観察し、角膜神経への影響が少ないことが報告されています2。また角膜知覚の低下は涙液分泌減少を起こし、ドライアイの原因になることが知られていますが、リレックススマイルでは術後ドライアイによる角膜の傷や自覚症状が軽いことも報告されています3。術後の涙の成分を調べた研究ではリレックススマイルの方が、涙液中の炎症を示すサイトカインがフレックス手術(レーシックとほぼ同じ手術をフェムトセカンドレーザーのみで行う手術)よりも低いことが報告されており、これはスマイルがレーシックよりも、角膜への侵襲が低いことを示唆していると思われます4。

1.澤木綾子、長谷川亜里、小島隆司、中村友昭、片岡嵩博、市川一夫、
Laser in situ keratomileusis とSmall incision lenticule extractionの術後成績の比較、IOL&RS 29: 384-390, 2015

2.Ishii R, Shimizu K, Igarashi A, Kobashi H, Kamiya K.
Influence of femtosecond lenticule extraction and small incision lenticule extraction on corneal nerve density and ocular surface: a 1-year prospective, confocal, microscopic study.
J Refract Surg. 2015 Jan;31(1):10-5.

3.Li M, Zhao J, Shen Y, Li T, He L, Xu H, Yu Y, Zhou X. Comparison of dry eye
and corneal sensitivity between small incision lenticule extraction and
femtosecond LASIK for myopia. PLoS One. 2013 Oct 29;8(10):e77797.

4.Zhang C, Ding H, He M, Liu L, Liu L, Li G, Niu B, Zhong X. Comparison of Early Changes in Ocular Surface and Inflammatory Mediators between Femtosecond Lenticule Extraction and Small-Incision Lenticule Extraction. PLoS One. 2016 Mar3;11(3):e0149503.

レーシックと比較して、惹起される球面収差が少ないことも報告されています。球面収差が少ないと、通常の視力などは特に変わりませんが、夜間など瞳孔が大きくなったときの見え方によい影響があると考えられています。名古屋アイクリニックからは、リレックススマイル手術後の患者さんは、レーシック手術後の患者さんと比べ、手術による球面収差の増加が少ないことが報告されており1、海外でも同様な報告が発表されています2。

1.澤木綾子、長谷川亜里、小島隆司、中村友昭、片岡嵩博、市川一夫、Laser in situ keratomileusis とSmall incision lenticule extractionの術後成績の比較、IOL&RS 29: 384-390, 2015
2. Lin F, Xu Y, Yang Y. Comparison of the visual results after SMILE and
femtosecond laser-assisted LASIK for myopia. J Refract Surg. 2014
Apr;30(4):248-54.

もう一つのメリットは角膜の生体力学特性の保持にあると考えられています。これは角膜の強度と言い換えると分かりやすいと思います。レーシックの場合は角膜にフラップというふたを作るため、角膜の強度が少し落ちると言われています。生体力学特性を調べる事が出来る検査器械Ocular Response Analyzer(ORA)で調べた結果、レーシックと比較して生体力学特性が保持されることが報告されています。

Wu D, Wang Y, Zhang L, Wei S, Tang X. Corneal biomechanical effects:
small-incision lenticule extraction versus femtosecond laser-assisted laser in
situ keratomileusis. J Cataract Refract Surg. 2014 Jun;40(6):954-62.
また最近は、スマイルでもさらに切開が2mmと小さいmicroincision lenticule extraction (MILE)が行われ、MILE手術はSMILE手術よりもさらに角膜への影響が少ないと報告されています。
Wu Z, Wang Y, Zhang J, Chan TC, Ng AL, Cheng GP, Jhanji V. Comparison of
corneal biomechanics after microincision lenticule extraction and small incision
lenticule extraction. Br J Ophthalmol. 2016 Aug 19.

 

6.リレックススマイル手術の合併症
手術を検討する際、もし万が一合併症が起こったら心配です。リレックススマイル手術も、安全と言われるものの合併症はゼロではありません。2017年に報告された3004眼という膨大な手術件数から割り出された合併症の割合は、レーザー照射中に吸引が外れてしまう合併症が0.93%、レンチクルが裂けてしまう合併症0.27%と報告されました。しかし合併症を起こした症例も、適切な処置により合併症が起こらなかった患者さんと同じように視力回復が得られたことが示されました。リレックススマイル手術もやはり手術の一種で合併症は起こりうると思われますが、その場合でも適切な処置で後の視力に大きく影響するような事にはならないという事が分かります。
Wang Y, Ma J, Zhang J, Dou R, Zhang H, Li L, Zhao W, Wei P. Incidence and
management of intraoperative complications during small-incision lenticule
extraction in 3004 cases. J Cataract Refract Surg. 2017 Jun;43(6):796-802.

7.リレックススマイル手術の課題
エキシマレーザーを使用するレーシックでは、切除する角膜組織を蒸散させて矯正しますが、リレックススマイル手術ではフェムトセカンドレーザーを用いて角膜内を切開し、切開した角膜片を抜き取るという術式をとります。エキシマレーザーとフェムトセカンドレーザーでは切開面の形状が異なるため、フェムトセカンドレーザーを用いたリレックススマイル手術の場合、角膜が馴染むまでの術後早期は視力が少し出づらいことがあります。これは角膜内で光の散乱が増えるためと考えられていますが、術後3ヶ月には術前と同じ程度に戻ることが分かっています。

Miao H, He L, Shen Y, Li M, Yu Y, Zhou X. Optical quality and intraocular
scattering after femtosecond laser small incision lenticule extraction. J Refract
Surg. 2014 May;30(5):296-302.

もう一つの課題は追加矯正です。リレックススマイル手術では正確に角膜を切開できるため高い精度で矯正できますが、生体組織を相手にしている以上誤差は生じます。術後に低矯正になることが稀にあり、これまで追加矯正の方法は定まっていませんでしたが、最近はCarl Zeiss社からサークルという名称の追加矯正用のプログラムが提供され、安全に追加矯正ができるようになっています。またまだ臨床研究の段階ですが、海外では追加矯正でも初回と同じようにリレックススマイル手術で補正しようという試みが始まっています。

Donate D, Tha?ron R. Preliminary Evidence of Successful Enhancement After a
Primary SMILE Procedure With the Sub-Cap-Lenticule-Extraction Technique. J
Refract Surg. 2015 Oct 1;31(10):708-10.

〈国内の医師による学会報告〉

1.小橋英長、神谷和孝、五十嵐章史、高橋正英、小松真理、清水公也: Small incision lenticule extractionとLASIK術後のregressionの比較、第68回日本臨床眼科学会、兵庫、2014

2. APACRS 2015. @マレーシア
Visual and Refractive Outcomes of Small Incision Lenticule Extraction for the Correction of Myopia: Three-Year Follow-Up
Hidenaga Kobashi, MD PhD1; Kimiya Shimizu, MD, PhD1; Kazutaka Kamiya, MD, PhD1; Akihito Igarashi, MD, PhD1.

3. 第30回JSCRS学術総会、東京、2015
屈折矯正手術におけるフラップ作製の有無がオキュラーサーフェスに及ぼす影響:メタアナリシス
小橋英長1、神谷和孝1、五十嵐章史1、清水公也1北里大

4.市民公開講座 日帰り手術
宮本 武 屈折矯正手術 和歌山県立医科大学眼科第16回市民公開講座2014年3月 和歌山

5.「スマイル手術における角膜後面変化について」 吉田陽子 第69回日本臨床眼科学会

6.宮本 武 特別講演 屈折矯正手術の現在・過去・未来  第150回 和歌山眼科集談会 2014年2月 和歌山

7.雑賀司珠也 フェムトセカンドレーザーLASIKとエキシマレーザーを使用しない屈折矯正手術 第7回Nagasaki Ophthalmic Club 2014年9月 長崎

8.宮本 武 我々の屈折矯正手術 第7回紀ノ川眼科研究会 2014年12月 和歌山